19. 11月 2016 · 榊原澄人 永遠の変身譚(3) はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会

2016年11月19日(土)

 

当館には、円弧を描く細長い展示室のほかに、もうひとつ展示室があります。

それが、この階段の下の黒いカーテンの向こう。

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ここは、ただ1作品《Solitarium》をじっくり鑑賞していただくスペースとしました。

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この展示室もまた、曲面が多用された作りになっています。

そして、写真ではわかりづらいかもしれませんが、奥に行くほど狭まっており、突き当りには円柱があります。

こうした建物の構造に、可動式の四角い展示壁面と細長い袖板2枚とを組み合わせて、スクリーンとしました。

全ての壁は斜めに配置してあるので奥行きがあり、まだこの先の空間があるのかと錯覚させます。

 

一瞬「どうなっているんだろう?」と思わせるこの展示方法は、実は偶然の産物です。

当初の構想では、円柱は隠し、お客様に正対するフラットな壁面の設置を予定していました。

が、展示作業の段階で、たまたま壁面をバラバラに仮置きし、《Solitarium》の映像調整をしていたところ、

榊原さんが「あ、この感じ、いいな。」とポツリ。

それでこの実験的な上映方法が決まったのでした。

 

榊原さんは過去にも立体的なスクリーンへの上映を試みています。

まるで洞窟の中のような雰囲気を好んで採用し、

なおかつ鑑賞者が絵の中に入る、つまり鑑賞者の影が映像にかかるのも歓迎しています。

ですから、みなさんご来館の際には遠慮なくこの部屋を歩き回って、作品を体感してくださいね。

 

《Solitarium》は、反時計まわりに全体がゆっくりと回転する作品です。

回転の中心(スクリーンの上端中央)にはギラギラときらめく太陽があり、

そのまわりを巨木、バクテリア、怪物、鳥、人間、ビル群など、ありとあらゆる物がうごめいています。

上述の通り一般的なスクリーンではないので、絵は時にねじ曲がり、時に引き伸ばされ、

遠近感覚が狂い、整合性のない摩訶不思議な世界となっています。

でもこれこそ、異様なエネルギーを放出する映像世界にぴったり。

 

今この時、清須市はるひ美術館でしか見ることのできない映像インスタレーションです。

 

 

 

 

【開催中の展覧会】

「榊原澄人 永遠の変身譚(メタモルフォーシス)」

会期:2016年10月4日(火)~12月11日(日)

開館時間:10:00~19:00(入館は18:30まで)

休館日:月曜日

観覧料:一般500円 中学生以下無料

 

 

 

 

12. 11月 2016 · 第3回清須キッズアートラボ はコメントを受け付けていません · Categories: 教育普及

2016年11月12日(土)

 

清須市内の小学3~4年生を対象に年4回行っている子ども向け講座「清須キッズアートラボ」。

今回は、ちょうど当館でアニメーションの展覧会を開催中であることから、

「動く絵」をテーマとしたワークショップを行いました。

 

まずは「榊原澄人 永遠の変身譚(メタモルフォーシス)」を鑑賞。

長い絵巻状の壮大なアニメーションに、子どもたちはじっと見入っていました。

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その後作業スペースに移動して、榊原澄人さんは1秒間に12枚の絵を描いてアニメーションを作っていることを紹介。

つまり、先ほど見たアニメーションは、何千枚、何万枚の絵を描いてようやく完成するのです。

「さぁ、みんなも12コマの絵を描いて、絵を動かしてみましょう

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今回はまず、「ゾートロープ」という装置を作ります。

それから、紙に12コマの連続する絵を描き、紙を輪にしてゾートロープの内側に装着。

ゾートロープをくるくる回すと絵が動いて見える、という仕組みです。

 

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ゾートロープは、方眼の付いた黒い厚紙で12角形をつくり、その外周に壁を立て、覗き穴の切れ込みを12か所あけて作ります。

紙が厚いので、ホチキス留めをするちいさな手に力が入ります。

 

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なお、ゾートロープの設計図は少々込み入っているので、あらかじめ当館のアートサポーターさんの協力を得て準備しておきました。

厚紙に12角形を作図したり、方眼のます目を正確に数えたりの作業は、大人のサポーターさんでも「頭の体操」だったようです。

サポーターさん、ありがとうございました。

 

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さて話を元に戻して、こちらはゾートロープの回転軸となる割りばしを通す穴をあけているところ。

穴だけはハサミではあけられないので、カッターを上手に使って切り落とします。

 

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ゾートロープが出来上がったら、子どもたちお待ちかねのお絵かきの時間

あっという間に12コマを埋めていきます。

 

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半分に切られたリンゴが大きくなってまん丸になるもの。

怒った顔がにこにこした笑顔になるもの。

てるてる坊主が風に吹かれて右に左に揺れるもの。

水中を泳いでいたナマズが水から顔を出すもの。

 

みんな、動きの面白さを抽出し、シンプルに、しっかりとした線で描けていました。

それをゾートロープに装着して回してみると。。。。

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「動いた」と歓声があがりました。そしてとっても嬉しそう

自分の描いた絵がいきいきと動く。本当に、これはちょっとした感動です。

 

たった1秒分のアニメーションをつくるだけで、こんなにたくさんの絵が必要なんだ、と

身をもって知った子どもたちでした。

 

 

 

催中の展覧会】

「榊原澄人 永遠の変身譚(メタモルフォーシス)」

会期:2016年10月4日(火)~12月11日(日)

開館時間:10:00~19:00(入館は18:30まで)

休館日:月曜日

観覧料:一般500円 中学生以下無料

 

 

06. 11月 2016 · 榊原澄人 永遠の変身譚(2) はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会

2016年11月6日(日)

 

今回の展覧会の見どころは、何といっても当館の細長い展示室をいかした作品の上映です。

幅5メートル、長さ約28メートルのきわめて細長く、しかも湾曲したこの展示室は、

学芸員泣かせと言ってもよいイレギュラーな形状で、普段私たちは、

どうしたら作品が映える展示にできるか、お客様の動線をいかにスムーズにつくるか、展示の度に頭を悩ませています。

 

ところが今回は、この細長く湾曲した壁がとても役に立ちました。

絵巻状に長い作品《É in Motion No.2》を、横幅23メートルの大スクリーンでご覧いただくことができます。

映像にすっぽりと包まれた、圧倒的な鑑賞体験。

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《É in Motion No.2》は《浮楼》の手法を継承・発展させた作品で、

光と闇、生と死、言葉と沈黙、戦争と平和、創造と破壊。。。

つまり世界のすべてが詰まった壮大な叙事詩です。

 

作品のフォーマットからして、またしても型破りなアニメーション。

人が絵巻を見るとき右から左に繰り進めるように、映像もまた全体がゆっくりと動いていきます。

止まって見ていても、まるで歩いているかのように、世界が次々と現れては消えていく様子は、

私たちの歴史を走馬灯のように眺めている感覚と言ったらいいでしょうか。

この作品と対峙していると、人間の来し方行く末についての瞑想に誘われていきます。

 

榊原澄人さんは《É in Motion No.2》を制作する際、絵巻物に着想を得ましたが、

本作が絵巻物と違うのは、始まりも終わりもないということ。そして、エンドレスにループし続けるということ。

《É in Motion No.2》は、円環状の輪になったスクリーンへの上映を念頭に作られた作品なのです。

 

ご来館のお客様にお配りしている作品リストに《É in Motion No.2》の全貌が載せてあります。

dsc_3212_mini←作品リスト

なので、これを輪っかにしてみていただければ、左右の端っこがつながり、

円環状に構想された作品だというのがお分かりいただけると思います。

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作品リスト自体も、榊原さんが絵巻に着想を得て《É in Motion No.2》を制作したことにちなみ、

巻物を模したデザインとしました。巻いた状態で自立します。

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当館では円環状のスクリーンはご用意できませんでしたが、《É in Motion No.2》のためにプロジェクター5台を連結し、

弧を描く壁面いっぱいに美しい絵が流れていく、という展示空間ができました。

彼の世界観は十分にお楽しみいただけます。

 

なお、本展の展示プランは、榊原さんご本人によるものです。

まだ実際に美術館にお越しいただいていない打ち合わせの段階で、展示室の図面をお見せしたところ、

すぐさま、この場所にこの作品をこういう形で上映したらどうかと、イラストで描いてくださいました。

その時の構想は、ほぼ実現されています。改めて、榊原さんの的確な判断に脱帽です。

 

 

 

 

 

【開催中の展覧会】

「榊原澄人 永遠の変身譚(メタモルフォーシス)」

会期:2016年10月4日(火)~12月11日(日)

開館時間:10:00~19:00(入館は18:30まで)

休館日:月曜日

観覧料:一般500円 中学生以下無料

 

 

 

 

04. 11月 2016 · 榊原澄人 永遠の変身譚(1) はコメントを受け付けていません · Categories: 展覧会

2016年11月3日(木)

 

開催中の企画展 「榊原澄人 永遠の変身譚(メタモルフォーシス)」。

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展覧会チラシのメインビジュアルに惹かれてきてみたら、絵ではなく映像の展覧会だった、

そういうお客様もちらほらいらっしゃるようです。

 

榊原澄人さんは映像作家であり、アニメーションを多く制作しています。

不親切かもしれないけれど、あえて「アニメーションの展覧会」とは銘打ちませんでした。

それは彼が、一般的なアニメーションの「枠」を飛び越える作品を数多く生み出しているからです。

 

たとえば、出世作 《浮楼》(2005年)。

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設定は、教会のある牧歌的な町。この背景は固定のままずっと動きません。つまり、カット割りはないのです。

そこに登場する8人の女性たちがそれぞれに一定の動きを繰り返しながら、変身していきます。

赤ちゃんが少女になり、娘に成長し、恋をして、結婚し、出産し、老いていく。。。

私たちは、小さな町を去来する8人の小さな物語を追いながら、

次第にそれが女性の一生という一つの大きな物語として編み上げられていることに気づくのです。

このかつてない手法に気づいたとき、複雑な構想を可能にした精緻な計算に驚くとともに、

命の営みに向けられた作家の巨視的な 眼差しに、感動さえ覚えます。

反復(ループ)と変身(メタモルフォーゼ)を巧みに組み合わせて、ミクロの世界にマクロの世界が体現されています。

 

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人物が変身を繰り返すうちに桜が散って、町は新緑の季節に。

どうしても人物の動きに気を取られがちですが、

季節の移ろいまでこまやかに表現されていますのでチェックしてみてくださいね。

 

 

【開催中の展覧会】

「榊原澄人 永遠の変身譚(メタモルフォーシス)」

会期:2016年10月4日(火)~12月11日(日)

開館時間:10:00~19:00(入館は18:30まで)

休館日:月曜日

観覧料:一般500円 中学生以下無料

 

 

 

 

 

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