2016年1月23日(土)
2016年最初の館長アートトークのテーマは「藤田嗣治」。
現在当館で開催中の「エコール・ド・パリ -パリに咲いた異邦人の夢-」展に作品が展示されている作家の一人です。
展覧会と合わせてご来場いただいた方が多かったようで、いつもより密集度高めです
藤田嗣治の人気の高さもうかがえますね
エコール・ド・パリのなかでもとくにその名が知られる藤田嗣治。
東京美術学校(現在の東京藝術大学)卒業後、1913年に渡仏。
ピカソやモディリアーニなど当時の前衛美術の最先端にいた芸術家たちと交流しながら独自の画風を築き上げ、1920年代にはフランス国内で高い評価を得るようになります。
この独特の風貌、見覚えある方もいらっしゃるかもしれません。
おかっぱ頭に丸眼鏡、両耳にリングのピアスをつけて粋なスーツを着こなす藤田は、当時のパリでもかなり個性的だったようです
(上映中の映画「FOUJITA」ではオダギリジョーが藤田を演じていますが、完璧に再現されていますね・・・!)
藤田をフランス語表記にすると FOUJITA になることから、頭の「FOU」をとって「FOUFOU(フーフー=お調子者)」という愛称でも親しまれていました。
奇抜な格好をしたり、ユーモラスな愛称をつくったりすることは、彼にとって自己表現のひとつであったと言えます。
モンマルトルやモンパルナスにヨーロッパ中から大勢の芸術家の卵たちが集まってきた1920年代。遠い東の異国からやってきた名もなき日本人画家が、芸術の都パリでいかにして生き抜いていくかということは、非常に重要な問題だったでしょう。芸術家としての技術はもちろん、自分を売り込むための自己プロデュース力も必要になってきます。藤田はその点で突出した才能を見せ、一躍パリの寵児になったのです
彼の作品の代表的な特徴といえば、乳白色の肌の裸婦です。特殊なメディウムの配合でつくり出されたなめらかで艶やかな肌の色は唯一無二のもの。
藤田は終生、自らの表現技法について誰かに教えることはなかったのだとか(近年研究が進み、タルク(ベビーパウダーの材料)を使用していたことが指摘されています)
またその乳白色を際立たせているのが、日本画で使用する面相筆と墨を使って描かれた繊細な輪郭線です。
浮世絵をはじめ日本の文化がフランスで流行していたことは有名ですが、藤田は日本人という自分のアイデンティティを強みにして、作品表現に生かしていた部分もあったのでしょう
その後、世界恐慌から第二次世界大戦へと続く激動の時代に入り、藤田は日本に帰国します。
フランスで確立したスタイルだけでなく、そのときの興味関心や描く対象によってさまざまな画風を見せていることから、藤田の類稀なる芸術センスと技量がうかがえます
戦中は軍からの要請で、戦地の様子を伝えたり兵士たちや国民の戦意を高揚させたりするような「戦争画」を手がけています。
こういった作品に対して今なおさまざまな意見がありますが、当時の日本に生きる画家として戦争に向きあい、彼ができることをやった結果であるということは言えそうです。
戦後、藤田をはじめとする戦争画家たちは戦犯として糾弾されることとなります。彼はそのような日本の美術界に見切りをつけ、再びフランスへ。フランス国籍を取得し、キリスト教に改宗して洗礼名「レオナール」を授かります。
晩年は教会建築にも携わり、フランス人「レオナール・フジタ」として生涯を終えました。
美しい女性や可愛らしい子どもの絵だけではない、藤田の多様な作品。
いまだ謎めいている部分も多く、魅力は尽きません
今回のエコパリ展では藤田作品を3点展示。
独自の画風を確立する以前の初期の作品と、最晩年の作品になります。
貴重なラインナップなので、ぜひこの機会をお見逃しなく
【開催中】
会 期:2016年1月9日(土)~2月28日(日)
開館時間:10:00~19:00 (入館は18:30まで)
休 館 日:月曜日
観 覧 料:一般700円、中学生以下無料