2016年1月20日(水)
清須市内在住在勤の方を対象に通年で開講している「清須アートラボ」。
今日は美術講座の西洋美術編②として、
「ルネサンスの幕開け ボッティチェリの《ヴィーナスの誕生》」と題してお話しました。
《ヴィーナスの誕生》といえば、名画中の名画。
ルネサンス期に入って、ギリシア神話の女神ヴィーナスを等身大の裸体で表現した
初めての作例として名高い作品です。
改めてよく観察してみようということで、何が描かれているのか一つひとつ確認してみました。
描かれた人物は何人か、場所はどこか、天候はどうか、季節はいつか、構図はどうなっているか?
気づいたことを各自書き込んでいきます。
まずはじっくり画面を見る。当たり前のようですが、これが絵画鑑賞の基本ですね。
描かれている人物や構図を確認したところで、
次はその人物のしぐさや姿勢が、何を参考に描かれたのかを探っていきます。
いかに高名なボッティチェリといえども、ゼロから全てを作り出すことはできません。
当時目にすることができた美術品などからアイデアをもらったはず。
親方ヴェロッキオの作品、パトロンだったメディチ家のコレクションのカメオ、
彼が暮らすフィレンツェの教会に描かれていた壁画、古代ギリシア・ローマの石像など、
いろんなものを着想源にして、描いたと言われています。
当時、《ヴィーナスの誕生》の優雅で堂々とした女性のヌードは非常に革新的なものでした。
現代の私たちからすると、見慣れてしまっているものでも、
当時の人たちの目にはとても斬新に映ったり、不快なものだったり、
挑戦的なメッセージを放つものだったりということがよくあります。
それは、ボッティチェリ一人の作品を見ているだけでは分かりません。
同時期に活躍した画家や、ボッティチェリ以前の作品と比較することで、
彼の独自性や立ち位置が浮かび上がってくるのです。
また、ボッティチェリが生きた当時の社会情勢、宗教や思想、パトロンとの関係なども
作品の理解を大いに助けてくれます。
それから、《ヴィーナスの誕生》の対作品と言われることも多いもうひとつの傑作《春》。
《春》は、ここに描かれた神々が一度に登場する文学的典拠がないために、
謎多き作品として、古来たくさんの研究者たちによって議論されてきました。
ですが、注文主も制作年もはっきりせず、未だ結論は出ていません…。
いろんな解釈が可能な点も、多くの人をひきつけてやまない理由なのでしょう。
さまざまな先行作品や新しい思想を貪欲に吸収し、
歴史の大きなダイナミズムの中で、自らの才能を開花させ、
後世に残る名作を残したボッティチェリ。
今回は、1つの名画に見え隠れする、美術作品の図像の連鎖、
そして作者を取り巻く社会との関係に思いをはせる時間になったのではないでしょうか。
【開催中】
会 期:2016年1月9日(土)~2月28日(日)
開館時間:10:00~19:00 (入館は18:30まで)
休 館 日:月曜日
観 覧 料:一般700円、中学生以下無料