2015年12月17日(木)
今年度4人目のアーティストシリーズは、
「清須市第8回はるひ絵画トリエンナーレ」にて優秀賞を獲得した大山紗智子さん。
愛知県立芸術大学大学院に通う学生です。
今回の個展では、「よくある運命」というサブタイトルで、
昨年・今年の2年間に制作した15点を出品しています。
大山さんの作品には、人々の日常生活に戦闘機が突如出現するという場面がよく描かれます。
ただ、戦闘機の出現という異常な事態にもかかわらず、画中の人々は驚いている様子もなく、
入浴をしたり、食事をしたり、遊んだり、休息したりと、もっぱら日々の営みに没頭しています。
なぜでしょうか。
12月12日(土)、アーティストトークにて、大山さんが作品について語ってくださいました。
戦闘機は、大山さんが愛好するプラモデルなのだそうです。
同時に、彼女にとっては、身近な人の死の象徴でもあります。
つまり、わたしたちの生の営みに突如出現するプラモデルは、
われわれに寄り添う、死の存在でもあるのです。
死はいつ私たちを襲うかもしれない。
けれど、それをことさらに恐れ、騒ぎ立てるのではなく、淡々と毎日を過ごしていきたい、
そんな思いがこめられています。
大山さんの作品は、タイトルを一ひねりしてあったり、
よく見ると人が穴に落ちていたり、浴槽から脚だけが出ていたりと、
見る人をクスリと笑わせる部分があります。
テーマの重さは前面に出さず、ユーモアをもって人の営みを捉えているのです。
まるで、「人生は滑稽だ」と言っているかのよう。
そして、戦闘機の出現に驚くでもなく、目の前の用事を粛々とこなす人間の姿は、
現代社会の縮図にも見えてきます。
日々どこかで起こる事件を、新聞やテレビ、SNS等で見聞きしてはいても、
他人事に深入りすることなく、我が事にのみ心をくだいている。
そんな人間の様子を、「人間ってこうしたものだ」とやや離れた所から肯定的に見ているのが、
大山さんの作品世界のような気がします。
ただ、最新作では、戦闘機が出現しない作品も。
色味も、赤茶と紺を基調にしたものから、紫がかった寒色を多く使ったものへと変化しています。
これら最新作では、物語性が引っ込んだ代わりに、
色や形をキャンバスにどのように配置するかという、造形的な実験が目を引きます。
今後の展開がとても楽しみな大山紗智子さん。
ぜひ、会場に足を運んで、大山ワールドを味わってくださいね。
12月27日まで開催中です。
【開催中の展覧会】
清須市はるひ絵画トリエンナーレ アーティストシリーズ Vol.80 大山紗智子展
会期:2015年12月10日(木)―12月27日(日)
開館時間:10:00―19:00
休館日:月曜日(ただし祝日の場合は開館、翌火曜日が休館)
観覧料:一般200円、中学生以下無料