2015年8月26日(水)
当館では7~9月にかけての約1週間、博物館実習生を受け入れています。
今年度は3名の大学生が、
美術館の運営にかかわる、学芸員のさまざまな仕事を体験しています。
実習6日目の今日、午前中は展示解説を実際にやってもらいました。
開催中の「ミッフィーのたのしいお花畑」展を、
自分のことばで来館者に分かりやすく説明するのです。
実習生たちは、緊張で頭が真っ白になったと口々に言っていましたが、
三人三様、それぞれに工夫できていましたよ。
まずは杉浦さん。
聞いているお客様は小さな子どもたち、という想定。
ディック・ブルーナの絵本に出てくる「お花」にしぼって、見るポイントを話しました。
ミッフィーの誕生を描いた『ちいさなうさこちゃん』に出てくるお庭の花から、
『うさこちゃんのたんじょうび』に登場するお花のワンピースまで。
途中、うっかりして説明に使う絵本を忘れるというハプニングもありましたが、
笑顔を絶やさず、子どもに語りかける口調で解説できていました。
続いて飯田さん。
解説を聞くのは大人という設定。
ディック・ブルーナの描く「線」をテーマに選び、話しました。
自身、洋画コースに在籍する立場から、学芸員ではなく作家目線の解説になってしまう場面もありましたが、
ブルーナが影響を受けたと語っているマティスをはじめ、
幾人かの作家の絵を資料として用意し、視覚的に伝わるよう配慮されていました。
最後は櫻井くん。
解説の対象は大人です。
ディック・ブルーナの絵本作りの特徴について、いくつかのポイントを選んで解説しました。
60年にわたるミッフィーのかたちの変遷、絵本のかたちとページ数、色など。
まず基本的な情報を伝える前に、個別の特徴を取り上げてしまう部分がありましたが、
作品をよく見て自分なりに分析し、考えたことをお客さんに問いかける、ということも出来ていました。
実習生の解説が終わるたび、一度みんなで集まり、学芸員も交えて
解説者のよかった点と、改善点を出し合います。
話す態度はどうだったか、声の大きさはどうだったか、
情報を出す順番は適切だったか、客観的で正確な情報を提示できたか、
自分の考えを述べる場合、それ相応の根拠のある内容だったか、などなど。
自分が解説をするだけでなく、人の解説を見るのも大いに勉強になります。
そして、改善点をきちんと言葉にして指摘することで、よりスキルアップできるのです。
緊張の解説が終わったあと、午後は収蔵庫に案内。
収蔵庫の仕組みや温湿度調整について一通り説明した後、作品の調書を取るという作業を行いました。
当館のコレクションの中から日本画1点、洋画1点を選んで、まずはじっくり観察。
調書に作品の状態をつぶさに記録していきます。
サイズ、材質、サインをはじめ、画面の傷やカンヴァスのたるみなど。
「モノ」としての作品の状態を把握し、いかによい状態を保って、
永く保存していくかを考える、これも学芸員に課せられた仕事の一つです。
最後にそれぞれが画面から読み取った情報を、3人で答え合わせ。
見落としていた所はないか?ライトを当てて確認します。
保存箱に入っていた作品は、慎重に元の状態に戻し、庫内の所定の場所に収めて完了。
作品を扱う時は、落としたり傷をつけたりしないよう、とても気を遣います。
実習生にとっては、午前、午後ともに緊張の連続だったことと思います。
それでも、作品に一番近い所にいるというのは何よりもやりがいのあること。
実習も残りあと1日となりました。
最終日には、実習生それぞれが考えた企画をもちよって発表です。
次回もがんばりましょう
【開催中】
ミッフィーのたのしいお花畑 ディック・ブルーナが描くお花と絵本の世界展
会 期:2015年7月4日(土)~9月30日(水)
開館時間:10:00~19:00 (入館は18:30まで)
休 館 日:月曜日(ただし祝日の場合は開館、翌平日が休館)
観 覧 料:一般800円、高大生700円、中学生以下無料