2015年7月22日(水)
今日は清須アートラボの美術講座を開講。
美術講座は、当館の学芸員が年に4回、トピックを決めて美術の世界を分かりやすくお話するものです。
今回は「日本美術編② 小さな宇宙 曼荼羅の世界」と題してお話しました。
「曼荼羅(まんだら)」ってご存知でしょうか
なんとなくイメージできるけれど、実物を見たという方は少ないかもしれませんね。
曼荼羅とは、仏教の中の「密教」の教えを視覚的にわかりやすく表現したもののことです。
では、「密教」ってなに?
参加者に宗派を聞いてみましたが、たまたま密教(天台宗・真言宗)の方はいらっしゃいませんでしたのでちょっと紹介。
密教とは、平安時代に空海や最澄によって中国から日本に伝えられた仏教であり、
もともとはインドでヒンドゥー教の要素を取り入れてできた教えです。
来世で極楽往生することを願い、「あの世」を大切にするそれまでの仏教と違って、
「この世」で幸せになれるとする現世利益(げんせりやく)の考え方をとったため、
当時の貴族たちに急速に広まりました。
曼荼羅にはさまざまな種類があります。 上の写真↑は(チベットの?)カラフルな砂をまいて作られたもの。
正方形や円など幾何学的な図形で構成されています。
これは、儀式が終われば崩されてしまいます。
↑こちらは壁面に吊る掛け幅ですが、仏の姿は、絵ではなく梵字(文字)で書き込まれています。
よく知られているのは、東寺にある両界曼荼羅です。「胎蔵界曼荼羅」と「金剛界曼荼羅」の2種類で1セット。
儀式をする場所に、向かい合わせに掛けて使われます。
それでは、密教の教えがどのようにこの曼荼羅に込められているか、見ていきましょう。
まずは胎蔵界曼荼羅↑。中心に行くほど仏様の位が高くなります。
真ん中に描かれているのは大日如来。その周りを8枚のハスの花びらが取り囲み、
菩薩などの仏たちが取り囲むかたちをしています。
それからこちら↑が金剛界曼荼羅。
上段真ん中にひときわ大きく描かれているのが大日如来。
9つの四角で区切られて、それぞれの四角に、円に入った仏さまが並んでいます。
それぞれの仏様は、姿を変えながら、各区画に登場。
現存最古の両界曼荼羅↑もご紹介。
かろうじて金銀泥で描かれた線が見えます。
宗教美術の例に漏れず、曼荼羅も、鑑賞目的で清浄な空気の所に隔離して保存されたわけではありませんでした。
護摩をたいた祈祷の際に使われるので、煤(すす)がついて傷みやすいのです。
↑ こちらは「立体曼荼羅」と言われ、絵画ではなく彫刻で密教の教えを表わしたもの。
京都の東寺にあって、拝観料を払えばいつでも見ることが出来ます。
空海の構想に基づいて作られました。
両界曼荼羅と同じように、厳然とした決まりに従って、21体の仏像さまが堂内に配置されています。
これを見た当時の人たちは、さぞかし驚いたことでしょう。
全身で超越的な仏の存在を感じ取り、畏怖の念をいだいたことと思います。
密教美術の話はなじみの薄いものだったかもしれませんが、皆さんメモを取りながら熱心に聴いてくださいました。
美術を通して当時の人々の祈りの心に触れていただけたのではないでしょうか。
ちなみに、空海が自らの修行の道場として開いた和歌山県・高野山にある金剛峰寺は、
今年がちょうど開創1200年。
ご開帳や特別公開など、今何かと話題にのぼり、ホットな場所です。
また、おへんろさんで親しまれている四国八十八箇所をはじめ、
各地で空海に関連した展覧会もありますので、これを機に出かけてみてはいかがでしょうか。
ミッフィーのたのしいお花畑 ディック・ブルーナが描くお花と絵本の世界展
会 期:2015年7月4日(土)~9月30日(水)
開館時間:10:00~19:00 (入館は18:30まで)
休 館 日:月曜日(ただし祝日の場合は開館、翌平日が休館)
観 覧 料:一般800円、高大生700円、中学生以下無料