2015年1月24日(土)
今日の館長アートトークのテーマは、情熱の画家ゴッホ
美術史にくわしくない方でも一度は名前を聞いたことがあるのでは・・・?
うねるような筆づかいと、あざやかな色彩は一度見たら忘れられないインパクトがあります。
そんなゴッホの作品、現在名古屋ボストン美術館で開催中の「華麗なるジャポニスム展」で見ることができます。
今回から清須市立図書館との連動企画として、
館長アートトークのテーマにちなんだ本を会場に置いてもらうことになりました
アートトークを聞いて、もっと知りたい!と興味を持った人にさらに理解を深めてもらえるよう、
会場にはゴッホの人生や弟との手紙のやり取り、描かれたモチーフ、さらには絵本にいたるまで関連本がずらり。
関連書籍は、アートトークの後借りることもできますよ。
さて、今回のテーマであるフィンセント・ファン・ゴッホ。
オランダ出身の彼はヨーロッパ各地を転々とした後、画家をめざしパリにやってきます。
ゴッホといえば、まばゆい黄色や紫がかった青など、
あざやかな色彩を用いた作品を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?
しかし若かりし頃のゴッホの作品は暗い色調のものが多く、
テーマも労働の苦しさや貧困を連想させるモチーフを描いたものが目立ちます。
↑こちらの作品で描かれたのは農夫たちの食事の風景。
食べているのは、じゃがいもです
簡素な室内と服装、そして重めのマチエールと色合いが貧しいながらも地に足をつけて生きる農夫の姿を際立たせる良品ですが、
残念ながらあまり人気が出なかったそう。
一方、当時のパリを席巻していたのは、
明るく軽やかな色彩と筆触で風景や都市の現代生活を描いた印象派でした
一向に作品が売れないゴッホも、印象派が描いたモチーフや技法を取り入れた作品を制作しています。
印象派風の筆触分割に取り組んだり、
モチーフを複数の視点でとらえ、画面上に再構成するセザンヌの技法を試したり、
ルノワールが明るい幸福感をもって描いたムーラン・ド・ラ・ギャレットを描いてみたり、
当時もてはやされていた作品をいろいろと模倣しています。
同じく当時のパリで一大ブームとなっていた、日本の浮世絵版画。
ゴッホも北斎や広重の浮世絵にちなんだ作品を残しています。
こうして流行の作品を多く模倣したゴッホですが、その良さが光るのは、
(恐らく貧乏な彼にとって身近であっただろう)じゃがいもなどの作物を描いた静物画。
特に籠に入ったじゃがいもを描いた右端の作品は、
獲れたてのじゃがいものみずみずしさが薄ピンクや紺色で描かれ、
輝くばかりの色彩にあふれた作品を制作する南仏時代を予見させます。
作品が売れないゴッホ。パリを離れ、南フランスに居を移します。
南仏の強烈な光の影響なのか、
この頃から画面に鮮やかな色彩があふれ始めます。
麦畑や、太陽を背に種を蒔く農夫を描いた作品は、
ゴッホが若いときから取り組んできた労働や農民といったモチーフを、
南仏滞在でつかんだ光あふれる鮮やかな色彩で表現した集大成ともいうべき作品です。
しかし、ゴッホは徐々に精神の均衡を崩してゆきます。
自分の耳を切り落として精神病院に収容され、
一時回復の兆しを見せたものの、最後は拳銃自殺を遂げました。
彼の死後、その劇的な生涯はある種伝説化し、
皮肉なことに生前売れなかった作品の値段も高騰します。
37年間の生涯を駆け抜けたゴッホ。
画家独自の試みと、売れるため当時人気のあった名画を積極的に模倣したという点をあわせて見ることで、
新たなゴッホ像が浮かび上がってくるのではないでしょうか。
次回の館長アートトークは2月21日(土)16時~、
テーマは「アルチンボルドのだまし絵、そしてマニエリスム」です。
電話申込:052-401-3881
※前日までにお申込みください。
【開催中の展覧会】
清須市はるひ絵画トリエンナーレ アーティストシリーズ Vol.76 井上雅夫展
会期:2015年1月27日(火)―2月14日(土)
開館時間:10:00―19:00
休館日:月曜日
観覧料:一般200円、中学生以下無料