2014年11月22日(土)
第26回館長アートトークが行われました。
テーマとなったのは、陶芸家・川喜田半泥子。
愛知県陶磁美術館にて、彼の生涯をとりあげた展覧会も開催中です
HPはこちら→『川喜田半泥子物語』
みなさんはこの明治から昭和を生きた実業家/陶芸家をご存知でしょうか?
「半泥子」…“はんでいし”と読ませるこの名前。
本名ではありません。
これは彼の号であり、「半分は泥んこになって夢中になる子どものように、
もう半分は冷静に作品を見つめる大人として」制作に打ち込みたいという姿勢をあらわしています
江戸時代から続く津の繊維問屋の長男として生まれた半泥子。
幼いころの半泥子の姿が残っていますが、
当時としては大変めずらしい洋服を着て写真におさまっています
裕福な旧家に生まれ、子どものころから美術品・骨董品にふれて、
ものをみる眼を養っていきました。
とはいえ、半泥子は若いうちから陶芸家としての道を歩んだのではなく、
最初は実業家として華麗なるキャリアをスタートさせます
20代半ばにして百五銀行の頭取に就任。
銀行の規模を拡大し、さらには県議会議員も務めました。
こちらは半泥子が頭取時代に通勤につかっていた車!
なんと陶磁美術館での展覧会に現物が展示されています。
主に陶芸家として名を成した半泥子ですが、
陶芸以外にもさまざまなジャンルで制作を行いました。
たとえば、こちらの写真。
野に咲くアザミに蝶がとまった一瞬をうつしとったかに見えますが…
その実、美しい構図を求め、活けたアザミに蝶の標本をあてがいながら
じっくりと室内で撮影されたようです。
鮮やかな色彩で描かれた、壷に活けられた花々
半泥子は油絵もたしなんでおり、近代洋画の大家・藤島武二に師事しました。
こちらの書も半泥子の手になるもの。
ゆったりとした、堂々たる作風で、作者の人柄が垣間見えるようですね
さて、いよいよ半泥子の陶芸作品を見てみましょう。
半泥子は特に茶碗や水指など、茶道にまつわる道具を多く制作しましたが、
それらの作品の「銘」に非常にこだわっています。
茶碗の景色を四季や花鳥風月にみたてた美しい銘があったり、
かと思えば、思わずぷぷっと吹き出してしまいそうなお茶目なネーミングをすることも
たとえば…
古伊賀の名品で「破袋(やぶれぶくろ)」という銘のついた水指があります。
オリジナルはこちら。
枯れた景色で、破格の美という言葉がふさわしい作品です。
これをモデルに半泥子が作ったのがこれ↓
なんでしょう…味があるというか何というか…
オリジナルと比べ下半身がぼてっとして垢抜けないものの、愛嬌がある作品です。
この作品に半泥子がつけた銘が、その名も「欲袋」!
こうしたちょっとユーモラスな銘の付け方も半泥子作品の魅力です
半泥子の人となりを感じられる作品がスライドに映るたび、
参加者の皆さんもほーっと感心したり、笑ったり。
洒脱で文人という名にふさわしい半泥子の人生を紹介した今回の館長アートトーク。
終始和やかな雰囲気で幕を閉じました。
次回の館長アートトークは12月20日(土)16時~17時、
テーマは「日本画家秋野不矩、インドに魅せられて」です。
電話申込:052-401-3881
※前日までにお申込みください。
【開催中の展覧会】
会期:2014年10月5日(日)―11月30日(日)
開館時間:10:00―19:00
休館日:月曜日(ただし祝日の場合は開館、翌火曜日が休館)
観覧料:一般500円、中学生以下無料