2014年11月16日(日)
開催中の岡田徹展。
今日は、担当学芸員によるギャラリートークを行いました。
会期中3回目のギャラリートークで、最も多くのお客様に来ていただきました。
展示室1では1930年代~60年代の作品を、
展示室2では1970年代~2002年の作品という風に、年代を追って展示しています。
ご遺族から2007~2014年の間に当館へ作品をご寄贈いただき、
現在、美術館としては最も多い計21点をコレクションしています。
本展ではこれに加え、現存する岡田の最も古い作品群を所蔵する岐阜県美術館より
初期作品5点をお借りして展示を構成しています。
これらは戦前・戦中の作品。
1930年代、当時最先端の美術運動だったシュルレアリスムが日本にもたらされると、
若き岡田も熱心に研究し、ダリの影響を感じさせる作品を描いています。
戦中、シュルレアリスム弾圧事件が起こり、岡田は特高警察に作品を没収され、
ついに返却されませんでした。
また、同じく美術文化協会に所属していた友人の画家は検挙されてしまいました。
自由な制作が許されないこうした過酷な戦争体験を経て、
岡田は戦後、反権力、反戦をテーマとして描いていくこととなります。
↑「カラスのシリーズ」は岡田の作品の中で最もよく知られた連作です。
岡田にとってカラスは、黄泉の番人であり、人々を導く知恵者でもありました。
カラスとほおずきは、彼岸のイメージを幻想的に彩るモチーフとして共によく登場します。
↑今回ポスターやチラシのメインビジュアルとして使用しているこちらの作品は、
「原爆幻想シリーズ」の一つ。
一見、良く晴れ渡ったさわやかな青空のようですが、よく見ると、
手前では奇岩が空からバラバラと落ちてきているという凄惨な場面です。
奇岩の一つひとつは絶叫する顔であったり、肢体であったり…。
私たち見る者の心をざわつかせ、想像をかきたてる作品です。
↑こちらは88歳の時に描き、絶筆となった《呪縛》。
おそらくは未完ですが、却って制作の過程を垣間見ることが出来る貴重な作品です。
様々なものが行く手を阻もうとするなか、もがき苦しみつつも前進しようとする人間。
生(せい)そのものを描いた作品のように思えます。
岡田徹は70年にわたる長い画業において、5~10年くらいの周期で、
描くモチーフや描き方をめまぐるしく変えています。
一方で、生涯一貫して人間の愚かさを主題にし、告発し続けました。
本展は、各時期に手がけたシリーズを通して、
画家としての軌跡をご覧いただける貴重な機会です。
ぜひ一度ご覧になり、闘い続けた一人の画家の生き様に思いを馳せてみませんか。
【開催中の展覧会】
会期:2014年10月5日(日)―11月30日(日)
開館時間:10:00―19:00
休館日:月曜日(ただし祝日の場合は開館、翌火曜日が休館)
観覧料:一般500円、中学生以下無料