2014年5月8日(木)
開催中の鳥羽美花展が、朝日新聞夕刊の「美博ノート」の欄に
3週連続で取り上げられました。
展示作品の中から記者さんが3点を取り上げて、詳しく紹介しています。
作品の魅力が凝縮された記事ですので、以下転載してご紹介したいと思います。
4月23日(水)
《オリエンタルドリーム》1998年 3曲屏風の一部
愛知県清須市出身の鳥羽美花は、日本の伝統的な型染めの技法でベトナムの移りゆく風景を20年にわたって描いてきた染色画家だ。中国の支配や、フランスの植民地時代、そしてベトナム戦争。「風景がこの国の変遷を見てきたんだと思う瞬間があった」と鳥羽は話す。
この初期の作品では、鳥たちを強い日差しから守る、布がかけられた鳥かごがずらりと軒に下がる様子を描いた。ベトナムには、年配の男性たちが朝の公園で大切に飼っている鳥を鳴かせ合う風習があり、ハノイの街には鳥や鳥かごを売る店がたくさんある。宙吊りの宮殿のように見えたという鳥かごには鳥はいない。生命を一切描かないことが、風景の中のざわめきや匂いをより鮮明にしているのだ。
4月30日(水)
《香河》1998年 2曲屏風
朝のサイゴン川が、市場で売るバナナや野菜を運んできた舟で埋め尽くされている。舟には自転車や竿(さお)などさまざまなものが積まれて、家のようだ。
ホーチミンのありふれた朝の風景は、トラック輸送の発達により20年後の今では見ることはできない。染色画家の鳥羽はベトナムを訪れた当初から「ここは変わる」と直感し、作品として残した。懸命に働き、勉強する人々の姿から、この国の発展が当時から容易に予想できた。
ベトナムでの展覧会は5回開催され、会場には学生も訪れる。精緻(せいち)な職人技で染め上げた絹地を屏風(びょうぶ)の形で展示する作品は反響を呼んだ。しかし何より自分の目ではもう見ることができない母国の景色が彼らの心を捕らえたのかも知れない。
5月7日(水)
三部作《辿りついた場所》2013年 4曲屏風
2~15世紀にベトナム中南部で栄えたチャンパ王国の聖地ミーソンに点在する遺跡を表現したインスタレーション。
この地を訪れた染色画家の鳥羽は、この盆地独特の蒸し暑さに日本の夏を思い出し、同時に王国の長い戦乱やベトナム戦争で破壊され続けた遺跡の女神やハスの花の台座のレリーフなどが昇華していくように感じたという。シャープな線や点を出すことのできる刀で、細部まで精緻に彫り込んでいる。昼から日暮れにかけて、レンガ造りの建物を照らす日の色あいが変わる3点の屏風(びょうぶ)を互い違いに並べることで、遺跡の間を通っていくような印象を与えている。
【開催中の展覧会】
清須ゆかりの作家 鳥羽美花展 時空を超えて-辿りついた場所より
会 期:2014年4月12日(土)~6月8日(日)
開館時間:10:00~19:00(最終日18:30まで)
休 館 日:月曜日(月曜日が休日の場合は次の平日が休館)