2014年4月26日(土)
本日、鳥羽美花さんご本人によるアーティストトークを行ないました。
以前から鳥羽さんのファンだった方や、今回初めてその作品をご覧になる方など、
50人以上のお客様においでいただきました。
鳥羽さんはこれまでベトナムの国立美術博物館やフエ王宮、薬師寺などで展示されてきましたが、
当館のようなコンクリート打放ち、白い壁の近代的な建物に作品を飾ることはほとんどなかったそうです。
今回の展示に当たっては、弧を描いた扇形の展示室をどのように活かすかを考え、
まるでベトナムの街をめぐるような展示構成としたことを説明。
「ぜひご一緒に旅をしましょう」と、お客様を展示室にいざないました。
途中、「今日は特別にお見せしようと思って持ってきました」と、
鳥羽さんが小さな型紙を取り出しました。
画面全体の構図を決定する大きな型紙とは別に、
この小さな型紙を反復して使用することで、画面に地模様のような、
影のような小さな点々をつけているのだそうです。
これによって、景色に深みが出て、大気のゆらぎまで感じられますよね。
展覧会では見えない、そうした制作の裏側も惜しみなくご紹介。
それから、作品の舞台となったベトナムの都市の事や、制作の動機となった出来事、
ベトナムで展覧会をした際の現地の人の反応なども、ていねいにお話くださいました。
ライフワークとしているベトナムの風景のほかに、本展では、日本の古都を描いた作品も展示しています。
引き算の美学、余白の美を尊ぶ日本のモチーフを制作することで学ぶことも多く、
結局、それがベトナムの風景を制作する時にも役立つのだとか。
最後に2階の、型染め制作工程を解説したコーナーへ。
ここには、鳥羽さんが実際に使われた大きな型紙が何枚も展示されています。
型染め技法では、この型紙を使って模様を作り出していきます。
型紙を切り取ったところが、最終的には白く残ります。
絹の上に型紙を置き、そのの上から糊(のり)を塗るので、
型紙が切り取られた場所には糊がついて、防染になるというわけなのです。
染める際に使う道具も特別に披露してくださいました。
動物の毛をつかった刷毛、糊置きの際に使う、もみの木のへらなど。
この木べらは、今はもう作る職人さんがいなくなってしまったとのこと。
型染めを下支えする様々な職人技が、時代の波にもまれ、いまや風前の灯となっている。
そんな厳しい現状にも思いを馳せる時間となりました。
鳥羽さんの作品世界を出発点として、ベトナムの歴史や日本が誇るべき伝統文化にも触れられる展覧会。
二重三重にお楽しみいただけること間違いありません。
次回のアーティストトークは5月25日(日)14時からを予定しています。
ぜひお出かけください。
【開催中の展覧会】
清須ゆかりの作家 鳥羽美花展 時空を超えて-辿りついた場所より
会 期:2014年4月12日(土)~6月8日(日)
開館時間:10:00~19:00(最終日18:30まで)
休 館 日:月曜日(月曜日が休日の場合は次の平日が休館)