2013年12月21日(土)
年内最後の館長アートトーク、今日はいつもよりもやや参加人数が多かったですね
師走の忙しい、そして寒い時期にご参加いただきありがとうございました
今日は「民俗学と日本の伝統パッケージデザイン」というテーマでした
通常は美術の話が多いこの館長アートトーク。
しかし、当館の高北館長はデザイナーの顔ももっています。
今回のテーマはまさに館長の専門領域のお話でしたね
さて、「みんぞくがく」と言っても、漢字で書くと2通りあります。「民族学」と「民俗学」
今日のお話は後者、「民俗学」について。
「民族」は、例えば大和民族などと言うように、土地や血縁関係、言語(母語)や宗教など、
ある一定の文化的特徴を基準に区別されるもの
一方、「民俗」はというともう少し小さい枠組みのことを指します。
主としてひとつの国や民族のなかの習慣や風俗、伝説、民話、生活用具など
日常生活の中に芽生える様々なものを対象としています
そんな「民俗学」ですが、特に日本の民俗学研究では、まず柳田國男の名前が挙げられます。
そして、その後を折口信夫が引きついでいったといえます。
日本の民俗学研究において、この二人の残した功績ははかりしれないものでしょう
と、こんな感じの座学のあとは、実際にどんな伝統パッケージが民俗学と結びついているのか、
膨大な量の画像を次から次へと見せてもらいました
こちらは、誰もが知っている祝儀袋や香典袋ですね
一番下は最近はあまり見られなくなった結納袋。
こうしたものに、デザイナーという人は存在しません。
必然から生まれ、民俗のなかで発展していったものなんです
だから、どんな祝儀袋も香典袋も基本的なところはみんな同じデザインになっています。
「祝儀袋とはこうあるべきもの」、というように自明のこととしてみんなが知っていますよね
普段、何気なく使っているこうした袋もよく見ると紐の結び方、色、全体のバランス等々。
どれをとってもとても美しい仕上がりになっています
こうしたところに、民俗が育んできた美的感覚を感じることができます。
例えば、今ではほとんど見なくなりましたが、干物を干すときのこのような状態や、
卵を持ち運ぶために考えだされた入れ物の美しさなどは、機能と見栄えが上手く融合した生活の中から生まれたデザインです。
ちまきの「包み」もいろいろなものがありますが、どれも美しいですね。
ちまきは笹で包まれていますが、もともと日本では「チガヤ」という植物で包まれていたことから、
「ちまき」という名前になったそうです
羊羹や豆のお菓子のパッケージデザインも、もともとは食べやすさ、保存のことなどが考えられていたとか。
こちらは、昔、駅弁を買うとついてきたというお茶の入った水筒
それぞれ陶器でできていて、よく見ると駅名が入っています
なんともおしゃれなかたちですよね。
と、こんな風に日本で生まれ根付いたパッケージデザインを民俗学的な視点から見ていくと、
身近にある様々なものがさらに美しく、そして愛おしく思えてきました
これで今年の館長アートトークは終了です。
毎回参加いただいている方も、そうでない方も、来年もどうぞよろしくお願いいたします
次回は1月25日(土)、テーマは「円空の正体、祈りと創造」です。
参加ご希望の方は、前日までにお電話かFAXでお申込ください。
【開催中の展覧会】
清須市はるひ絵画トリエンナーレアーティストシリーズ Vol.71 源馬菜穂展
会期:2013年12月8日(日)~12月27日(金)
開館時間:10:00~19:00
休館日:月曜日
観覧料:一般200円 中学生以下無料