2013年10月27日(日)
昨日開催した高北幸矢館長アートトークは、いつにもまして白熱しました。
テーマは「赤瀬川原平とハイレッドセンター」。
ハイレッドセンターとは、1960年代に生まれた前衛美術グループのこと。
以下の3人のメンバーの頭文字を取って、ハイレッドセンターと名づけられたものです。
高松次郎の「高=ハイ」、赤瀬川原平の「赤=レッド」、中西夏之の「中=センター」。
シンプルだけど、なかなかのインパクト。ネーミングセンスを感じますね
さて、このグループの出現がいかに画期的だったかを理解するには、
長い美術の歴史を、ざっと振り返ってみる必要があります。
有史以来近代まで、人類が生み出した美術の多くは、注文主がいて、
画家に制作を依頼してはじめて誕生していました。
レオナルド・ダ・ヴィンチの《最後の晩餐》は、教会の注文があって生まれました。
ナポレオンの肖像画は、ナポレオンがその権勢を示したいとの思いがあって生まれました。
つまり作品には、発注主の意向が色濃く出ていると言うわけですね。
近代以降、美術作品を買い求める層は、それまでの教会や王侯貴族から、
庶民へと急速に拡大します。
画商が間に入り、売れる作品が重視されていきました。
ここでもやはり、作品には買い手の意向が強く影響していたのです。
これらは考えてみれば、これはごくごく当たり前のことです。
美術家だって、稼いで食べていかなくちゃいけませんから。
作品を買ってくれる人(クライアント)の意向は、ある程度汲み取りますよね。
ですが、純粋に美術家のやりたいことを追求するなら、発注者や買い手の意向はさておこう、
と考えたのが、ハイレッドセンターのメンバーなのです。
つまり、簡単に言えば「やりたいことのためには、売れない作品でも作る」という、
前代未聞のスタンスを打ち立てたのでした。
それは時に、作品というかたちあるものではなく、
パフォーマンスや文筆活動などでも様々に展開されていきます。
芥川賞を受賞した短編から、最近話題になった『老人力』まで、
赤瀬川原平の著作は数知れず。
また、代表作の一つとしては、上の写真のように《宇宙の缶詰》があります。
これは、缶詰の内側にラベルを貼ることで、私たちも含め缶の外側の宇宙全体を梱包したというもの。
このすごいアイディア、くすっと笑わせてくれます。
路上に出て清掃をしたり、無用となった後もそのまま残っている階段やトンネルなどに注目したり。
ユーモアと機知に富んだ新しい物事のとらえ方を、行動や作品を通して次々に示しました。
(この路上観察は、とりわけ皆さんの関心を引いたようで、会場に笑いがおきていました。)
それまでの美術のあり方を問い直し、これからの美術はどうあるべきか
という根本的な問いを、赤瀬川原平は人々に投げかけたと言っていいでしょう。
今回のテーマ、赤瀬川原平とハイレッドセンターを取り上げる展覧会が、
名古屋市美術館で11月9日(土)から始まります。
赤瀬川原平らの柔軟な発想にはっとさせられる、そんな面白い体験ができるかもしれません。
ぜひ見に行きましょう!
次回、館長アートトークは11月23日(土)16:00~17:00
「横山大観、大観の富士と富士への道」です。
こちらもどうぞご期待ください。
企画展 「歌舞伎 | 変身」
会期:2013年10月8日(火)~12月1日(日)
開館時間:10:00~19:00 (入館は18:30まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館、翌火曜日が休館)