『暗幕のゲルニカ』原田マハ(新潮文庫、2018年)
原田マハは、小説家で本著も小説である。ただ早稲田大学第二文学部美術史科を卒業し、その後森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館勤務を経ている。既に著書も多く70冊を超えている。美術というこれまでに多くない小説分野で、著者のキャリアは無尽蔵にテーマがあると思われる。
『暗幕のゲルニカ』は、あのピカソの『ゲルニカ』のタペストリーのことである。『ゲルニカ』を複製したものである、ピカソが監修したレプリカでニューヨーク国連(国際連合)本部に飾られている。それは国連があるべき姿を示唆し、象徴的な存在としてある。
著者の言葉「本作は史実に基づいたファクションです」とあり、架空の人物と実在の人物が登場する。架空の人物は特定のモデルは存在しないという。つまりフィクションであるがノンフィクションとしてのリアリティをもったものである。『ゲルニカ』はスペイン、マドリッド、レイナ・ソフィア芸術センターに収蔵され、常に公開されている。その『ゲルニカ』のタペストリーもニューヨーク国連本部にある。何より小説のもう一つの核は、2001年9月11日のアメリカ同時多発事件、世界貿易センタービルの空爆である。
ピカソが『ゲルニカ』を完成させる1937年から9.11を超えて2003年まで、パリとニューヨークを行き来してのドラマは、ノンフィクションを核としているからこそ緊張感を持って最後まで読み続けることが出来た。文庫本497ページの長編である。










