26. 8月 2026 · August 26, 2026* Art Book for Stay Home / no.191 はコメントを受け付けていません · Categories: 日記

『利休 破調の悲劇』杉本苑子、写真:大西成明(講談社、1990年)

出版された1990年は、利休没後400年ということで、利休ものの本、映画が多く生まれ、当時私は40歳であったが、利休の映画を観、本を何冊か読んだ。中でも深く感銘を受けたのが本著である。あれから35年が過ぎて、再読した。

利休に関しては、史実にもまして逸話が多く、その一つ一つに著者は鋭い考察を与えている。その考察が興味深く、特に利休の育った堺の町について、茶というものがどういう形で武士の嗜みとなり、堺から茶人が多く出たのか。津田宗及、今井宗久らを出し抜いて後輩の千利休が、信長、秀吉に取り入ったのか。単に茶人として優れていたという単純なものではない。そこにはビジネス的才覚と併せ持った美意識が求められた。

利休の逸話の中で最も興味深いのは、秀吉から命ぜられた切腹であって、その史実に対しての理由が明確にされていないことである。いくつかその推測を紹介し、推測に過ぎないことを述べた上で、著者の推測は秀吉の思惑が堺から博多に移ったことであるという。それは天下を収めた後、朝鮮に打って出る思惑のもと、堺の利休は不要となったこと、博多の商人の登用にはその証を示すことが早道であった。

本著は、大西成明の写真と合体するような形となっており、小説ではなく、歴史書でもなく、著者の推論で終始している。しかし利休の関連史跡、事物をドキュメンタリー大西の写真と併載することで、ドラマチックな利休論となっており、その編集デザインも大きな魅力である。

02. 8月 2026 · August 2, 2026* Art Book for Stay Home / no.190 はコメントを受け付けていません · Categories: 日記

『青春のギャラリー 気づき・学び・励み、自身を生きるアーティストたち』中山真一(風媒社、2026年)

B5版、201ページのボリューム、重い。青い表紙の真ん中に『青春のギャラリー 気づき・学び・励み、自身を生きるアーティストたち』。内容は想像されるが、特定される何かがない。青いカバー、青春だから青なのか、そういう青ではない。学園ドラマやスポーツで展開される爽やかで明快な青春ではなく、陰鬱で深い広がり、過ぎてみればやはり青春と呼べる無知、才気、乱暴、弱さ、苦さ、それでも志すものがあるゆえの強い想い。どんよりとした深い海のような青いカバー、そこには上手くいかない青春だからこの青が選ばれたのかも知れない。

熱筆(ねっぴつ)。

読後、私の感想はこの一語に尽きた。著者中山真一さんを親しく知る方、あるいは前著『愛知洋画壇物語』(風媒社、2011年)を読まれた方は、誠実で細やかな気遣いと確かな知識の積み重ねの著をイメージされるかも知れない。私もそのようなイメージで本著を開いた。目次に26名の作家名が並んでいる。名古屋画廊社長である著者として、予想される作家も並んでいるが、その中に佐藤可士和、千住博、村上隆など「おっ」と思わせる作家も並ぶ。

熱筆、とにかく文章が熱い。特にページ数も多い水谷勇夫、笠井誠一、村上隆らはそれぞれで一冊成就できるのではないかと思われる。つい「中山さん熱いなぁ」と読みながら言葉が出る。26名の作家は、全て本人、もしくは遺族への丁寧な取材と多くの資料によって書かれている。そこからの源泉が著者に火をつけて、かくも熱く感銘を起こさせるのだろう。著者の美術作品への愛とアーティストへのリスペクトが研ぎ澄まされた言葉の一つ一つに籠っている。

『青春のギャラリー』は、26名26の無知、才気、乱暴、弱さ、苦さ、それでも志すものの強い想いが描かれ、飾られたギャラリーなのだろう。