01. 7月 2021 · July 1, 2021* Art Book for Stay Home / no.69 はコメントを受け付けていません · Categories: 日記

『堀文子の言葉 ひとりで生きる』堀文子(求龍堂、2010年)

本著は、堀文子の語り下ろしを中心に、これまでに刊行された書籍『堀文子画文集 命といふもの』 (小学館)、『ホルトの木の下で』(幻戯書房)、『堀文子画文集 命の軌跡』(ウインズ出版)、『堀文子画文集』 シリーズ(JTBパブリッシング)ほか、新聞、雑誌に掲載されたインタビュー記事などの資料をもとに、 著者監修のもと再編纂したものと記されている。発行当時92歳という長寿、しかも日本画家として大いなる活躍を続けている人の言葉を集めると、それはそれは説得力があり、味わい深い言葉、後進の我々にとって人生の素晴らしい道標となる言葉が並ぶ。刊行の依頼に対して堀は「自分は宗教家でも思想家でもないし、お説教じみたような本はたまらない」と固辞した。編集部はなんとか拝み倒して取材を進めていくと、ますます魅力的な言葉が集まって「こんなに自分のことをべらべらと語りあげているような本は恥ずかしい」と再び固辞している。「読みたい」という圧倒的な読者を味方に編集部はゴリ推して出版にこぎつけた一冊であるが、絞り出すように語った堀の気持ちにしてみれば恥じらいのほうが大きかったのだろうと思われる。まして画家である、言葉が輝けば輝くほど画家としての自分に責めて返ってくる言葉でもある。読者の救いは堀の厳しい言葉に添うように堀の絵があることである。

「息の絶えるまで感動していたい。」
「私は岐路に立たされたときは必ず、未知で困難な方を選ぶようにしています。」
「私はいつも己と一騎打ちをしています。自分で自分を批判し、蹴り倒しながら生きる。」
そういう言葉を全身で納得して読み進めていると、それは堀が読者に伝えたかったのではなく、なかなかそうではない自分に対して激しく命じているのがわかる。

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