10. 4月 2021 · April 10, 2021* Art Book for Stay Home / no.61 はコメントを受け付けていません · Categories: 日記

『キュレーターズノート二〇〇七―二〇二〇』鷲田めるろ(美学出版、2020年)

キュレーター鷲田めるろは、1999年より2018年まで金沢21世紀美術館キュレーター、2020年より十和田市現代美術館館長。本著は自らのキュレーターとしての活動をレポート、批評を加えたものである。主に金沢21世紀美術館在籍中のものであるが、そこにとどまるものではなく、第57回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館キュレーター、あいちトリエンナーレ2019キュレーター、金沢美術工芸大学客員教授など幅広い活躍が注目されている。

現代美術にスタンスを持つ鷲田は、美術、美術館、展覧会、プロジェクト、ワークショップをはじめ美術教育、地域の問題、まちづくり、芸術祭、都市とアートなど様々な関わり合い方によりアートの持つ可能性を拡げている。「これがアートか」という問いの前に、アートは何をなしうるのかが徹底している。そのために必要な知識に貪欲である。

個展などの単位から視点は見据えられ、都市や民族が生み出すダイナミズムへの視野へも欠けることがない。多くの興味深いレポートから「1980年代の日本の美術に関する展覧会を開催するに当たっては、金沢21世紀美術館は設立の20年前(1980年以降)からを収集の対象としていること」、現代美術の時系列に対して考え方を明らかにしていくことの重要性を語っている。「金沢21世紀美術館のデザインギャラリーにおいて、現代美術のキュレーターが持つ可能性とはなにか」、デザイン軸をずらすことなく立ち向かっている。「芸術祭と美術館の創造的関係について、これからどのような可能性と問題を孕んでいるか」、あいちトリエンナーレ2019「表現の不自由展」にキュレーターとして真っ向から取り組んだ経験を通して提議している。

清須市第10回はるひ絵画トリエンナーレ審査員の一人としてお願いした。一点一点の絵画作品から見えてくる多様な問題を提起いただいた。今後の清須市はるひ美術館にとって刺激的なメッセージとして活かしていきたい。