19. 7月 2020 · July 19, 2020* Art Book for Stay Home / no.23 はコメントを受け付けていません · Categories: 日記

『日本の庭園・鑑賞ガイド 庭がよくわかる本』野村勘治、撮影:大橋治三(婦人画報社、1994年)

美術の領域をどのように決めるかということは、美術そのものを理解する上で極めて重要なことである。
日本画が好きとか、民芸が好きとか、あるいは映像が好きとか、そのことは観る者の全く自由で、不自由であってはならない。
私は美術の領域を極めて広く考えるべきだと思う。なぜならどの分野も造形的に他領域と関わっており、広く影響を与え合っているからである。また分野はあっても境界線を引くことはできない。

とりわけ日本の庭園は、「龍安寺石庭」に代表されるように美術の一領域として位置づけられているにもかかわらず、鑑賞という点で極めて難解さを感じている人が多い。
本著のサブタイトルには「庭に隠された約束ごと」とある。日本の庭園鑑賞が難しいのは、この「約束ごと」にある。しかも「隠されている」のである。
旅行にでかけて、庭園が名所になっていたから覗いてみたという経験は多くの人があるだろう。しかし入園してはみたものの、どこが良いのだろうか、どこをポイントに見ればよいのか。説明パンフレットには何年に、誰(施主)が造ったかが書かれているものの鑑賞に関してはよくわからない。
本著扉には「それは、庭の歴史が紡いできた約束ごとが隠されているからです。」とある。

難しいことは入門書を手に取るというのが私の方法である。
本著はガイド本であり、3分の2ほどが美しい写真である。当然、有名な庭園は網羅されている、既に行ったところもある。

造形物を楽しむというのが美術の基本である。
しかし、絵画のような平面、彫刻のような立体は物理的に捉えやすいが、庭は空間である。
空間は対峙して観ることもできるが、空間という作品の中に入って観ることもできる。
空間の中に入ると見え方(景色)が変化する。
そこには時間も感じられて、自らの人生の長さを通して観ることになる。
歳を重ねるほど庭の良さを愉しむことができるのはそこにある。